廃線後、約23年間歩みを止めていた電車が、2022(令和4)年10月、再び動き出しました。
旧月潟駅は、1999(平成11)年に廃止となった 新潟交通電車線の車両と駅施設を保存しています。
「走れ!かぼちゃ電車」は、旧月潟駅で保存している車両のうちの1両(モハ11号)を、車両移動機“アント”による推進・牽引によって走行させるイベントで、不定期に開催しています。
走行距離は往復で約100m。これは、おそらく世界で一番短い鉄道旅行でしょう。
詳しい車両解説は、かぼちゃ電車保存会HPをご覧ください
電車に乗るには、自動券売機や自動改札機、ピッとタッチするICカードが当たり前となった時代。
ここでは、かぼちゃ電車の現役当時をそのままに、硬券と呼ばれる厚紙の切符を出札口の窓口で購入して乗車していただきます。
出札口の駅員さんが箱から切符を取り出し、ダッチングマシンという日付刻印機で今日の日付を入れて、改札ではパチンと音がする改札鋏でパンチ(切り込み)を入れる。
今や珍しくなった、こんな一連の流れも楽しんでください。
※状況によっては「車内補充券」タイプの切符の販売も行うこともあります。
「走れ!かぼ電」開催日の音風景。
電車のモータで走行しませんので、残念ながらツリカケサウンド(※1)はお楽しみいただけず、アントのエンジン音が響きます。
しかし、それ以外の音はほとんどそのまま。
電子音の発車ベル、ドア開閉音とブザー音、ブレーキ音、一部の自動放送(※2)は現役時代と同一です。
是非、開催日に現地で味わってください。
※1 吊り掛け駆動方式という、古い電車でよくみられたモータから輪軸へ動力を伝達する方式は、重低音を伴った独特の走行音がする。現在でも、古い路面電車などで聞くことができる。
※2 自動放送のうち、改札開始・接近放送・一部の車内自動放送は当時の音声をそのまま使用しています。
旧月潟駅の構内の架線には、電力が供給されていません。
よって、電車の屋根上にあるパンタグラフから集電して、モータを回して走行することはできません。
「走れ!かぼちゃ電車」では、電車の前に黄色い車両移動機(小型の機関車)「アント」を連結して、電車を推進・牽引しています。
アントは小さな車体ですが、旧月潟駅で保存されている車両3両を動かすことができる、まさに小さな力持ちの“蟻ん子”です。
アントの車体上部には、ラクダのこぶのように機器を追設しています。
これはコンプレッサ(空気圧縮機)です。
電車のブレーキやドアの開閉などには圧縮空気が必要です。2023年の開催までは地上に設置していたコンプレッサで圧縮空気を供給していましたが、充填に時間がかかることや、エアホースの抜き差しの手間が生じることなどから、2024年よりアントにコンプレッサを搭載して運行しています。
コンプレッサ自体の性能も格段に向上したことから、圧縮空気の充填時間も大幅に短縮されました。
「走れ!かぼちゃ電車」は、市民団体である かぼちゃ電車保存会のメンバーをはじめ、他所の保存団体からの応援メンバーも加わりイベントを運営しています。
当会には、上越市のくびき野レールパークの運営と掛け持ちしている会員が数名居り、ここでも動態保存の運行に携わっています。また、エンジニアや鉄道現業職員をはじめとした各種専門職や有資格者が会員として居り、訓練や修繕、そして改良を重ねながら、安全で楽しいイベントの開催を続けられるよう、企画・運営・運行しています。
ページ下部の「車両走行イベントの舞台裏」では、走れ!かぼちゃ電車のイベントを開催するまでのさまざまな出来事を掲載しています。
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